コンセプトの作法(3)分解:部品とチューニング
7つの"コンセプト部品"でギターのようにチューニングする。
会議で「コンセプト」を発表した後、相手の目が輝くより前に「どういう意味?」と返される時、あー失敗したなと感じる。説明が必要なコンセプトは意味が無い。そんな時は慌てて"部品"を確認することになる。
多少の強弱はあるがコンセプトを会社やクライアントへの「他者への働きかけ」マシンとして分解してみると私の事務所の場合は7つの部品になる。この部品の組み合わせで事業計画から商品開発、表現までのコンセプトを20年間、なんとか組み立ててきたことになる。
- Idea of the Self 「自分のアイデアの"宣言"」
- Framing「働きかける"対象とフレーム#」
- Understand「他者に瞬時に理解させる"言葉"」
- Share「他者と共有できる"価値"」
- Originalcreative「人から人へ自然に波及していく"独創性"」
- Starting point「常に立ち戻れる"原点(本質)」
- Language「相手が理解できる言語としての"アウトプット"」
積み木のように組み立てるというより、実際はギターや電波のチューニングに近い。
コンセプトアイデアや展開イメージなどを目的とする状態に調整するイメージだ。
チューニングは案件で異なる。テンプレートやショートカットはない。
私の事務所の場合にはこの7つの部品があるだけで、
そこから先には特別なメソッドやシステムはない。案件ごとに背景や環境が異なれば、
行き着くコンセプトの姿もルートも異なるわけで、
いちいちテンプレートで考えるほうが面倒なのがその理由。
案件ごとに見えてくるルートに従って、強めたり弱めたりチューニングするしかない。
もちろん信頼できるメンバーとブレストしたり、フローを書いたり、
アウトラインプロセッサを使ったり発想法を変えたりはするが、
決してテンプレートやショートカット的な発想をすることはない。
もし他人のコンセプトを流用するなら、プレゼンの最中に真っ白になっても
何も説明できないことを覚悟しておくしかない。
コンセプター、プランナー、コンサルタント、建築家など
コンセプトをプロ的に発想している人たちはスタイルにこそ違いはあれ
最終的にはみんな同じ「手作業の知性」で進めているはずだ。
自分の中の「手作業の知性=Bricolage」
「手作業の知性」は抽象的なものではなく、本やWEB上に漂よっているコンセプトワードや人々の無意識の反応、まだとらわれていない感覚を読み抜いて自分の頭のなかのコンセプトボードの上にコラージュできるスキルだと思う。
同じようなことを文化人類学者のレヴィ・ストロースが「プリコラージュ」として定義している。「Bricolage」は理論や設計図に基づいて物を作る「エンジニアリング」とは対照的な概念で、その場で手に入るものを寄せ集め、それらを部品として何が作れるか試行錯誤しながら、最終的に新しい物を作ることを意味している。
コンセプトは人間本来の思考と言語能力のひとつ。でもそれは「手作業の知性」でしかもたらされない。コンセプトを手がけるなら、効率化より自分の「手作業の知性」能力の回路を開けるかどうかに注意をはらったほうがいい場合もある。(puck)