コンセプトの作法(1)意味:価値を「受胎」する
もしコンセプトがなかったら
もしコンセプトがなかったらiMacもiPhoneもなかっただろう。
いつもいくモダン和風のお気に入りの店もなかっただろう。
フリクションペンもなかったし、音楽も映画も、面白いコマーシャルもアニメも、
コンセプトなしには今ほど面白いものにはなっていなかっただろう。
どんな天才でもアイデアが自分の中にある限りは、いつまでたっても妄想のままだ。
誰かにその価値を伝え、短時間でその価値や基準を理解・共有させて
「さぁ新しモノを創ろう!」とキックオフしない限りは、
人が驚くようなものは生まれない。コンセプトの力はそこにある。
コンセプトの意味は常に多面的
九州でコンセプターという仕事柄、コンセプトの説明を求められることが頻繁にある。
「そもそもコンセプトって何ね?」「日本語で言うとなんて言うと?」
様々に質問する人の顔を見ると本当に分からなさそうな顔をしているかことが多い。
そんな時の説明はだいたい3つの表現に分けて説明することにしている。
Level1 「自分のアイデアを他人に瞬時に分からせるための短い言葉」
Level2「様々な分野で自分のアイデア・価値を他人に瞬時に理解・共有
させる力を持った本質まで削ぎ落とされた言葉の探究と定義」Level3「個人の妄想が社会的に共有可能な存在としての価値を宿した言葉」
「自分や個人」から、他人に理解・共有させる行為ということや、
言葉であるという部分は変わらないが、理解力は依頼する人により異なるので
表現を少し変えている。それでも最後には「面倒くさい」と言われてしまうのだが。
日本の伝統的な語彙にはないので、外来語としての意味を定義するしかないので
検索で探って見ると「概念」や「商品コンセプト」など多くのワードがヒットする。
コンセプトに関わる人ごとに意味や定義が異なるのもコンセプトの特長のようだ。
私の事務所でのコンセプトの定義も完全でなく、常に更新待ちの暫定の定義だ。
商品なのか家なのか、それとも空間なのか・・コンセプトをどう求めるかで
意味は少しチューニングが変わっていく。
コンセプションのもうひとつの意味「受胎」
特に3番目の説明が実は一番近いと思っているし、私は気に入っている。
意外と知られていないが、コンセプトの類似語である「Conception=コンセプション」は概念という意味の他に「受胎」「妊娠」という意味も持っている。
「価値が宿る」という点ではコンセプト(コンセプション)はビジネスというより、
古代から人間が芸術や科学で新しいことを創造する時に求めてきた
根源的な知的活動という世界観が近い。
数年前ロンドンに行った時、コンセプターという職種が昔からあるのを聞いて驚いた。
Immaculate Conception(無原罪の御宿り)
コンセプトを必要とする人の固有のテーマや環境で変化するものだからこそ、
商品開発など決められたテーマがない状態では、つかみにくいものかも知れない。
さて、つかみにくい事象にはどう対応したらいいか。分解するしかない。
自分のためにもひとつひとつ分解して、改めて探究していこうと思う。(m)